札幌高等裁判所 昭和30年(う)775号 判決
所論は本件推薦状加名依頼状約二、五〇〇通の郵送頒布は、選挙運動を行うために当然に必要な準備行為で推薦状はがき作成の準備のためにしたものであるにかかわらず、原判決はこれを選挙運動のために使用する文書の頒布と認めた点に事実の誤認があると主張する。しかし原判決挙示の証拠を綜合すれば、昭和三〇年二月一日告示の衆議院議員総選挙に当り北海道中川郡美深町天塩川木材株式会社の社長松浦周太郎は北海道第二区選出議員候補者として即日立候補届出をし、被告人は右会社の製材課長で右選挙につき選挙運動員となつたものであるところ、同候補の選挙事務所として予定された旭川市二丁目七番地旅館組合事務所で、同年一月一九日頃推薦状はがき作成の準備のため北海道第二区内約六〇町村内の各町村一名乃至数名の松浦周太郎後援支持者として、かねて予定されていた連絡員に対し、松浦候補のためその推薦状はがき裏面の下段に印刷すべき松浦候補を推薦する推薦加名予定者に対し、その町村別になるべく多数加名依頼の内交渉し、その推薦加名承諾者の氏名を知らしてもらいたい、氏名をとりまとめ通知してもらえば活字印刷の上推薦状はがきを発送する旨の推薦者加名依頼の内交渉の依頼及び推薦者氏名とりまとめ報告方依頼の文書を旭川市二の七旅館組合方松浦周太郎後援会事務局名義にて発送し、右選挙運動の準備行為をしたものであるが、更に松浦候補に投票を獲得するため選挙人に働きかける目的で、同年二月上旬頃より中旬頃迄の間に、上川郡上川町字日東一四一番地戸田清一外約二、五〇〇名の選挙人に対し、法定の通常はがき以外の文書で同候補者に対する推薦状加名依頼状約二、五〇〇通を郵送頒布した事実を認定することができる。そうして原判決挙示の証拠竝に領置に係る推薦状はがき(当審昭和三一年領第一四八号)により明かな如く、被告人より北海道第二区内約六〇町村の各連絡員に対し推薦者氏名とりまとめ報告方依頼の文書が発送されて、推薦状に関する選挙運動の準備が一応終了した後に、更に本件文書が右連絡員以外の一般選挙人約二、五〇〇名に対し発送されている点、これに応諾して推薦承諾の回答をしたものに対しては法定の推薦状はがきの発送がさしひかえられている点、法定の推薦状はがきに記載せられた推薦文言の数倍に亘る松浦候補に対する推薦文言が右文書に記載せられ郵便封書で一般選挙人に発送されている点等より考えれば、弁護人主張の如く右文書が単に推薦者として推薦状に加名せんことのみを依頼して発送せられたものとは到底認めることができない。さればこれを選挙運動のために使用する文書の頒布と認めた原判決には事実の誤認がない。論旨は理由がない。
(裁判長裁判官 原和雄 裁判官 羽生田利朝 裁判官 中村義正)